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2025年上半期読書アンケート,図書新聞, 3697号,2025年7月26日

2025年度上半期読書アンケート

①松隈洋、未完の建築 前川圀男論・戦後編、みすず書房。②原広司・吉見俊哉、このとき、夜のはずれ、サイレンが鳴った、岩波書店。③友田正彦編、大陸部東南アジア古代木造建築、鹿嶋出版会。④千葉学、地球を相手にした道具、王国社。

①は、前著『建築の前夜 前川圀男論』に続く、前川圀男論の完結・戦後編である。前川圀男の最晩年に前川圀男建築設計事務所に入所し、20年にわたって勤務した(1980~2000)著者による大部のこの二冊は、前川圀男がリードしてきた日本の近代建築の実相を窺う最良のテキストであり続けるであろう。②は、今年1月3日に亡くなった建築家原広司の遺著となった対論集。ゲラをチェックする時間はなかったというが、最後まで拘ってきた建築への思いとその広がりを窺うことが出来る。③は、東京文化財研究所にあって「文化遺産国際協力コンソーシアム」の事務局長を務める編者による東南アジアの木造建築についての貴重な記録。④は、東京大学教授として教鞭をとる建築家による建築論集。派手な物言いを弄することなく、真摯に地球環境の問題を身近に問う。問われ続けているのは、「建築の前夜」でも「未完の建築」でもなく「近代建築」そのものである。

                                  布野修司(都市建築批評)

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