2024年下半期読書アンケート,図書新聞,29284号,2023年12月23日

①中西昭雄、漱石『門』から世相史を読む、作品社。②長尾重武、『閑吟集』を歌おう、鳥影社。③松本創編著、大阪・関西万博「失敗」の本質、ちくま新書。④布野修司・森民夫・佐藤俊和、希望のコミューン 新・都市の論理、悟空出版。
①は、漱石の『門』(1910)を徹底して読み込みながら、日露戦争後の日本の「世相」を浮き彫りにする。著者は、『週刊朝日』『アサヒグラフ』などの編集を経て独立し、数々の著書を世に問うてきた編集者であるが、その緻密さはまるで学位論文のようである。前著『シベリア文学論序説』(2010)ではドストエフスキーを読んだ。東京の暮らし(第Ⅰ部)は、否応なくこの百年の東京の変貌を考えさせられる。メディアと暴動(第Ⅱ部)、アジアへ(第Ⅲ部)、近代と病(第Ⅳ部)も、現代社会の深層を突いている。②は、建築史家でもあり歌人でもある著者が「愛の歌集」『閑吟集』に挑む。③は、来年に迫った「大阪・関西万博」の背景に切り込む。地域政党と中央政党、IR誘致と万博開催、祭師たち(広告業界)と建設業界の絡まりあいが浮き彫りにされる。オリンピックや万国博覧会を国土計画や都市開発の手段とするのは既に時代遅れである。④は、自立・自律・自給をめざす基礎自治体(コミューン)が国民国家を超えて、分散自立組織DAOとしてネットワークを形成する世界システムを提起した。
布野修司(建築批評)
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