仮設住宅の創意工夫 台湾のまちづくり最前線 伝統文化の継承 見聞録01,共同通信,200007

見聞録01
仮設住宅の創意工夫 台湾のまちづくり最前線 伝統文化の継承
一見何の変哲もない小屋に見える。だが、建築家の大いなる思いが込められた小屋だ。
この三月、中央研究院での講義と震災復興の調査を兼ねて台湾に出かけた。三月十八日は総統選投票日。二十一日は大地震からちょうど半年になる。投票日直前、李遠哲中央研究院院長が陳水扁候補を支持して辞任、政治的緊張の高まりの中での訪台となった。
台風の目となったノーベル化学賞受賞者、李遠哲氏は社区営造学会会長でもある。社区とはコミュニティー(地域社会)のことだ。この間の社区総体営造(まちづくり)運動を精力的にリードしてきた。台湾大地震後は、全国民間災後重建連盟の理事長をつとめる。
中寮、集集、長寮尾、埔里と社区営造学会が支援する地区を中心に回った。びっくりするのは山の樹木がすっかりずり落ちて黄色い山肌が所々あらわになっていることだ。農村集落が広範に被害を受けた。都市直下型だったら、死者 二千人ではすまなかったろう。
それぞれに興味深い復興の動きがあった。なかでも引きつけられたのが、この小屋、日月潭のタオ族のための仮設住宅であった。<BR> 設計は建築家謝英俊。現場に事務所を移して陣頭指揮を執る。彼がバイブルにしたのが千千岩助太郎の「台湾高砂族の住家」(一九六〇年)だ。原住民の伝統文化をどう継承するをテーマとし、大いに学んだという。
ローコストだから、軽量鉄骨の骨組みに竹で屋根、壁を組むシンプルな構法だ。これだと建設に原住民が参加でき、日当も手に入る。鉄板の屋根や壁より暖かみがある。原住民にとっては単に住空間があればいいというわけではない。祭祀(さいし)のための空間も必要だ。機械的に棟を並べるのではなく共用の広場がきちんと設けられている。
将来の利用方法も周到に考えられている。仮設住宅地といえども多彩な創意工夫がある。近接して神戸から送られた仮設住宅が建てられていた。その光景の方が寂しげに見えた。

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