縄文の森を埋め込む 屋上緑化 壁面緑化 見聞録10,共同通信,200104

見聞録10
縄文の森を埋め込む 屋上緑化 壁面緑化
三方縄文美術館
福井県三方町
横内敏人建築設計事務所 設計
布野修司
小さな芝生の丸い岡に、大中小いくつかのコンクリートの楕円の筒が突き刺さっている。周囲をめぐると筒が様々に重なり合って表情を変える。全体は岡に埋め込まれ、建物そのものによって自己主張するところがない。正面のない建築である。
まるで円墳のようだ。古代の越の国は、出雲とともに四隅突出型古墳が出土する。すなわち大和とは異なった文化圏があったことが知られる。しかし、何も古墳をイメージしたわけではない。ここに収められるのは、古墳時代にはるかに先立つ縄文時代の遺物だ。福井県三方町には鳥浜貝塚という国内屈指の縄文遺跡がある。その遺跡を縄文の森に埋めるようにつくられたのがこの建築である。
平面の形は三重の楕円形をしている。一番奥の楕円が最大の筒で、映像シアターになっている。次の楕円が縄文ホールと呼ばれる主展示室で、いくつもの丸い筒が巨大な樹木のように上から降りてくる。一番大きな楕円の岡に楔形の切り込みがつくられており、人々は、その縄文の森を模した空間に誘われる、そんな仕掛けだ。小さな筒は換気塔と光の塔である。全体を土と芝生で覆うことによって、光をどうとるかが大きなテーマになる。建築家の腕の見せどころである。
全体の形は背後の山によく合う。土と芝生は断熱にも大きな役割を担う。通風のシステムもよく考えられている。何より楽しげなのは、この岡にどこからでも自由に登れることである。天候がいい季節には子どもたちが鈴なりになるのだという。 こうした全体を土で覆う建築はこれまでもなくはない。そうした中でも、テーマといい、立地といい、空間構成といい、なんとなくぴったりとくる作品だ。屋上緑化、壁面緑化ということで、こうした建築のあり方はさらに様々に追求されるだろうが、どんな建築でも土や緑で覆うというわけにはいくまい。問題は、本来の森をとりもどすことである。










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