路地型集合住宅 街並みのモデル きめ細かい設計 こじんまりとしたスケール,見聞録14,共同通信,200109

路地型集合住宅 街並みのモデル きめ細かい設計 こじんまりとしたスケール
中島ガーデン 静岡県富士市 設計 松永安光 近代建築研究所
布野修司
全部で一二戸のこじんまりした集合住宅である。家の中から毎日富士山が見える。実にうらやましい。
二階建ての住棟が三列に並ぶごくシンプルな構成だ。しかし、単調さを破る工夫がある。まず、真っ直ぐ富士山に向けて斜めの通路が走っていて面白い。通路の上には平行して二階の住戸のためのブリッジがあり、その上に立つと富士山が住戸の壁と壁の間に見える仕掛けである。また、各戸の坪庭が交互に配置され、眼を楽しませる。さらに、幅二メートル程の路地が心地いい。スケール感がいいのである。小さな池と水路も効果的だ。モウソウチク、ヤマモミジ、ベニカナメ、そして下草にシャガ、ヤブラン、フッキソウ、ユキノシタ、コグマザサなど植裁もきめ細かくデザインされている。全体として路地と坪庭が実に効果的に外部空間を形作っている。設計者は、路地型集合住宅という。
住戸は全て二寝室で一室は和室という構成であるが、メゾネット(二階建て)型が二種類、フラット(平屋)型が二種類用意されている。一二戸でも居住形式の多様性に対応する意図もある。全てが専用庭を持ち、南北に通風と採光が採れる。目新しい技術の利用があるわけではないが、細部に目配りの効いた設計である。
単なる空き地が連なるだけの集合住宅が少なくない中で、共用空間が随分豊かである。ひとつには、特定優良賃貸住宅制度(特優賃)という制度の利用がある。敷地を民間が提供し、金融公庫が融資し、共用部分の建設費を公共が補助し、基準収入以下の入居者に対して家賃補助を行うという制度である。もっと利用されていい。 一二戸ほどの小さな集合住宅に、二〇〇一年度の日本建築学会賞が与えられた。個人住宅や小規模の集合住宅が受賞するのは珍しい。小さいが、日本の街並みをつくっていくモデルになるというのが最大の評価である。

コメントを残す