メキシコ・シティの再開発 タワーめぐり一騒動勃発,見聞録16,共同通信,200111

見聞録16(15)
ソカロからラテン・アメリカ・タワーへ
メキシコ・シティの苦悩!?
問われる歴史的都市核の再開発
超高層の海に沈むかコルテスの街
布野修司
京都のような格子状の町に住んでいるせいだろうか。世界中の格子状都市が気になって、ついにはメキシコまで行ってきた。中南米はスペインがつくった格子状都市の宝庫である。フェリペ二世が都市はこうつくりなさいとワンパターンに命じたのである。
メキシコ・シティの地をコルテスが征服した時、テスカカ湖の上にはアステカ帝国の都テノチティトランの壮麗な姿があった。それを破壊し、その石材を使って彼は自分たちの都ヌエヴァ・エスパニョールを建設した。ソカロと呼ばれる中央広場の周辺には、スペインの当時の都市に負けないカテドラル、宮殿が建つ。宮殿の隣地からアステカの中央神殿跡が発見されたのは一九一三年のことだ。ひどいことをしたものだ、とつくづく思う。
とは言え、ソカロは既に五〇〇年にも及ぶ歴史を誇る。周辺は世界文化遺産に指定されている。ところで、その地区にエンパイア・ステート・ビルを小型にしたようなラテン・アメリカ・タワーというビルが建っている。
地上四四階、さらテレビ塔が載って一八二メートルにもなる。驚いたことに一九四八年に着工して五六年に竣工している。日本に霞ヶ関ビルが出来る(六八年)遙かに前である。設計者はオルティス・モナステリオ。日本において、六〇年頃国立自治大学図書館の民族的表現などが話題になったことがあるが、この建物は知られていない。アメリカ建築の華々しさの前に無視されたのだろう。耐震性にすぐれ、度重なる地震にも問題ないという。
このタワーをめぐって今一騒動が起こりつつある。なんと、大統領とメキシコ市長は、都心活性化のために、ゾカロからラテン・アメリカ・タワーの町へ化粧直しをはかることで一致、そのためのプロジェクトを発表したのである。近代建築の理念と美学は根強いということか。果たして、栄光のコルテスの町も、超高層の林立する街の底に沈んでしまうのであろうか。


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