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笑う住宅   くねって,捻(ひね)って,捩(よじ)って 見聞録09,共同通信,200103

見聞録09

  笑う住宅   くねって、捻(ひね)って、捩(よじ)って

  屈折住宅 

 愛知県三河安城

 竹山聖+アモルフ 設計

 

 布野修司

 新幹線の車窓から眺める市街地の風景はどこも変わり映えがしない。似たような戸建て住宅の家並みが続いて、マッチ箱だの鶏小屋だのと評される。実際、日本の住宅というのはどこでもワンパターンだ。nLDKと聞いて、住所を知ればなんとなくわかってしまう。同じように工業材料で造られ、地区によって建物の高さや建ぺい率、容積率が決められているから日本中の住宅地の風景が似てくるは当然でもある。

 そんな住宅地の中でこの住宅は一風変わっている。腰をくねって今にも倒れそうである。平面的にも折れていて、側面の壁も編に傾斜している。よくよく見ていると可笑しい。腹を捩(よじ)って笑っているようだ。

 建築家は竹山聖。手堅いディテール(収まりの詳細)で知られる。殊更気を衒(てら)うつもりはなく、ちょっと捻(ひね)るだけで新しい空間がつくれることを示したかったという。クライアント(施主)は独身で、空間的には多少の余裕もあった。

 捩れた箱と鉄筋コンクリートの塔、全体は二つの棟からなる。錆びた鉄の扉を開けて中に入ると、基本的に二階まで吹き抜けた、くねった空間がある。奥にダイニング・キッチンが置かれ、その上にある二階の寝室には、傾げた空間をぐるっと回って行く。吹き抜けの空間に接する鉄筋コンクリート造の別棟の一階には茶室(和室)、三階に浴室が配されている。

 捩れた空間に、様々な光が落ちる。不思議な空間が味わえる。水や白石、竹など、素材の配し方も巧みだ。贅沢と言えば贅沢だ。  高齢化、少子化が進み、日本の家族のあり方は多様化しつつある。確実なのは単身者が増えることである。コレクティブ・ハウス(グループホーム)のような集合形式が必要とされる一方、こうしたゆとりのある単身者の住宅が日本の住宅地の風景を変えて行くのであろうか。

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