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京都都心の惨状 林立するマンション 消えゆく町家 覆いがたい理念の分裂,見聞録21,共同通信,200204

見聞録21

 京都都心の惨状

 林立するマンション

 消え逝く町家

 覆いがたい理念の分裂

 

布野修司

京都の、堀川、烏丸、河原町の南北通り、そして御池、四条、五条の東西通りで囲まれる地区を通称「田の字」地区という。祇園祭ゆかりの山鉾町が含まれる京都の核心域である。訪れる機会があれば、とにかく歩いてみて欲しい。なんともちぐはぐな光景を目の当たりにして考え込んで欲しい。

「田の字」地区はいま騒々しい。ここそこに工事現場がありクレーンが聳えている。不況にも関わらず、未曾有のマンション建設ラッシュなのだ。虫食い状に空き地と駐車場が蔓延り、ビルの谷間に町家が埋もれつつある。

この間喧々囂々たる非難を浴びているのが高松伸の手掛ける巨大なマンションだ。一棟のマンションの東西で学区が分かれる。京都の街割りには明らかに大きすぎる。それに新規さを売ってきた高松にしては何の変哲も工夫もない。皮肉というべきか、真向かいに高田光雄・江川直樹によるマンションが同時に建設中だ。町家型集合住宅を謳い、前面を低く押さえる工夫がある。話し合いを重ねた経緯もあって近隣住民は受け入れつつある。

しかし、いずれにせよ町家の規模ではない。一方で書割でもいいからかつての街並みを維持すべきだという主張がある。また、京町家再生研究会のように現存する町家の再生を手掛ける集団もある。マンショ・ブームの一方で、それに抗するかのように大変な町家ブームだ。町家に住みたいという若者が増えている。また、町家改造の店が増えている。かくして、てんでばらばらの建物が並んで収拾がつかない。いかんともし難い。

大きな問題は全国一律の法規定である。市としては都心に人口は増えて欲しい。地主は、建蔽率、容積率一杯に建物を建てる。京都で起こっていることは全国の大都市で起こっていることと同じだ。街並みが崩れるのは当然である。そして致命的なのは、京都に相応しい建築形式についての理念が分裂していることだ。京都にかつての面影を期待するなかれ。

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