土木デザインの新展開 都営大江戸線・飯田橋駅,見聞録20,共同通信,2002 03 11

見聞録20
剥き出しの地下空間
土木デザインの新展開
何にお金を使うのか
地下鉄都営大江戸線・飯田橋駅
設計:渡辺誠/アーキテクツ・オフィス
布野修司
東京へは度々出掛けるけれど用事をこなすのが精一杯だから町を歩く機会はほとんどない。行ったといっても移動は地下鉄であり、歩くのは地下街だ。東京駅から地下街を辿ればほとんど雨に濡れずに歩ける。東京は既に一大地下都市と化している。
都営・大江戸線の飯田橋駅をたまたま通りかかって驚いた。打ち放しコンクリートの肌が剥き出しのままなのである。そして、天井を蜘蛛の巣のように、所々照明灯が組み込まれた緑色のパイプが這っている。新鮮だ。
地下鉄のホームや通路というと天井が低く、背を折って歩く重苦しい閉塞感がある。しかし、この駅は何よりも天井が高く伸び伸びしている。それに地上のように随分明るい。普通は天井を貼って様々な設備を隠してしまうけれど、ここでは全て剥き出しにして、その分大きな空間が確保されている。そして、緑のパイプも現代彫刻のようで斬新だ。
同じような通路やホームで地下街にはアクセントが少ないから個性豊かな駅の誕生は歓迎である。大江戸線の駅のデザインには他にも何人かの建築家が関わったという。いくつか見て歩いたけれど最も挑戦的なのがこの飯田橋駅だ。そっけなかった橋梁や高速道路など土木構築物のデザインを見直す貴重な試みのひとといっていい。制度的な枠組みが強くて思うようにいかなかったというが、その悪戦苦闘を評価したい。
出来たものは素っ気ないトンネルにすぎない。素材をそのままに表現する1960年代初頭のブルータリズム(野蛮主義)のデザインのようだ。利用客の評価は果たしてどうであろうか。賛否相半ばするかもしれない。設計者は渡辺誠、ポストモダンの旗手とも目された建築家だ。その溢れる表現意欲を押さえたある種の欲求不満を解消するかのように地上の入口には異形の排気筒が建っている。この排気筒は必要なのか。何にお金を使うのか、デザインとは何か、大いに考えさせる作品だ。










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