布野修司 都市のグローバルヒストリー「グローバル・ヒストリーの現在と未来 ―近代世界システム論をこえて—」 オーガナイザー 高垣里衣(新潟大学)司会者 高垣里衣(大阪公立大学)報告者 秋田茂(大阪大学・名誉教授)前川一郎(大阪大学)布野修司(滋賀県立大学・名誉教授)山下範久(立命館大学)討論者 島田竜登(東京大学)社会経済史学会 第 95 回全国大会, 会場:専修大学生田キャンパス, 026 年 5 月 9 日(土)・5 月 10 日
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2026年度社会経済史学会全国大会・パネル要旨
オーガナイザー:高垣里衣(新潟大学)
島田竜登(東京大学)
「グローバル・ヒストリーの現在と未来――近代世界システム論をこえて」
パネル要旨
本パネルセッションは、現代歴史学の潮流のひとつであるグローバル・ヒストリーやグローバル経済史の研究が、これまでどのように行われてきたのか、また、今後どのように行われていくのかを、イマニュエル・ウォーラーステインの近代世界システム論を議論の起点として討論することを目的とする。
1970年代に提唱されたウォーラーステインの近代世界システム論は、それに追随するにせよ批判するにせよ、多くの研究を生み出してきた。その代表例が、アンドレ・グンダー・フランクの『リオリエント』であろう。リオリエントは、世界経済の中心が、長らくアジアにあったことを示した研究である。フランクの議論は、冷戦後の急激なグローバル化の進展やアジアの経済発展と軌を一にして、歴史学の主流であった一国史観に転換を迫るグローバル・ヒストリーと呼ばれる研究潮流の一角となった。
世界経済の中心と同様に重要な主張が、近代世界システム論とリオリエントには存在する。それは、世界経済の構造にかんする主張である。従来、産業革命をもって始まったと考えられてきた「近代世界」に対する理解は、近代世界システム論によって新たな視点がもたらされた。ウォーラーステインは16世紀を近代の始まりとしたのである。くわえて、ウォーラーステインは、西洋中心的ながらも世界経済の構造を中心―周辺関係から描き、格差問題についても言及した。一方、フランクの認識によれば、近代経済の始点は1500年よりも前にある。また、フランクは、世界経済とは世界各地域のシステムの総和であると考えた。
こうした『近代世界システム』と『リオリエント』の論争により、世界経済の構造と、ヨーロッパとアジアとの関係性について新たな歴史認識が生まれた。では、その論争を引き継いで生まれてきた「グローバル・ヒストリー」では、何が論じられてきたのか。西洋中心主義へのアンチテーゼから、行き過ぎたアジア中心主義史観が主体となるような歴史叙述に陥る恐れはないであろうか。あるいは、グローバル・ヒストリーという言葉が、単純に使いやすい言葉として濫用され独り歩きしているのではあるまいか。現在のグローバル・ヒストリーは、近代世界システム論とリオリエントが投げかけた世界構造の認識について、どこまで応えることができているのか。
近年のグローバル・ヒストリー研究の成果によって、ヨーロッパとアジアは、あたかも対等なパートナーであったかのように見える。ロナルド・ロビンソンのコラボレーター論が示したように、植民地官僚による帝国維持への協力も存在したと考えられる。しかしながら、世界帝国には、確実に支配―被支配の関係が存在した。つまり、反西洋中心主義の視点から歴史を描いたとしても、アジアからみた歴史観と、従属理論の例となったラテンアメリカやアフリカから見た歴史観は異なるであろう。また、支配―被支配関係が、それぞれの地域にもたらした影響も異なるであろう。経済だけでなく、人の生活への影響といった面からみれば、支配―被支配の力関係は、世界各地の都市計画や住まいのあり方にも影響を与える。グローバル・ヒストリーは、近代世界システム論が掲げた世界経済の構造と支配―被支配の関係性を、どのように捉えるのか。また、植民地支配を受けた地域に着目する歴史研究者は、どのように近代世界システム論を咀嚼しているのか。
くわえて、苛烈な脱グローバル化とグローバル世界の瓦解の動きさえ見られる昨今の国際情勢のなかで、われわれはどのように歴史や経済史を叙述すべきなのか。E. H. カーの言うように、歴史家の思考と時代背景は相互に影響を与えあっている。ここで取り上げた近代世界システム論、リオリエントやグローバル・ヒストリーは、それぞれの時代背景が人々に思考の転換を促し生まれてきた研究の視点である。グローバル・ヒストリーの叙述は、いかように変化していくのか。
このような問題意識をもとに、本パネルは、学界を牽引してきた研究者を報告者として招き、近代世界システム論、リオリエント、あるいは広義のグローバル・ヒストリーと自身の研究のかかわりや、パネリストそれぞれの研究の視点や方向性をお話いただく。報告順と内容は、以下の通りである。また、パネリストによる報告や討論のほかに、フロア参加者との議論の時間を十分に確保する。
《報告順と報告内容》
1. 秋田茂(大阪大学名誉教授)「アジアから考えるグローバルヒストリー」
2. 前川一郎(大阪大学教授)
3. 布野修司(滋賀県立大学名誉教授)
4. 山下範久(立命館大学教授)
都市のグローバルヒストリー









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