布野修司責任編集:『都市美』4号「特集 ローカル・エリア・リパブリック」

布野修司責任編集:『都市美』4号「特集 ローカル・エリア・リパブリック」,河出書房新社,2026年6月30日

都市美 第4号 :布野修司|河出書房新社

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ローカル・エリア・リパブリック-世界を疾走する山本理顕

Local Area Republic-Riken Yamamoto Running around the World

特集前記

「地域社会圏」と山本理顕はいう。英訳すればlocal community areaである。そして,主催する「地域社会圏究所」をローカル・エリア・リパブリックLocal Area Republicという。直訳すれば,地域「共和国」である。『都市美City Beautiful』というこのメディアの根底にあるのは、「地域」とは何か、「地域社会community」とは何か?「共和国republic」とは何か、という,世界の「空間」的編成への根源的問いがある。

英語のrepublicの語源はラテン語のres publicaに遡る。resは「もの」「事柄」「案件」を意味する。publicaは「公共」である。単純化すれば,「王」がいない「もの」「事柄」「案件」がリパブリックrepublicである。政治制度としては,君主制Monarchia(monos(一人)+ archein(支配)に対して,誰か一人の「私物」ではない「公共」のものとして管理されるのが「共和制republic」である。「私的支配(dominium)」 vs 「公共的秩序(res publica)」である。

「共和国」=「共=共有・共同」「和=秩序・調和」「国=政治共同体」という訳語は,近代以降に「国民国家」を前提とする制度概念として定着するから「共和制」と訳した方がいいと山本理顕はいう。「ネーション・ステートとシティ・ステート」(『都市美』第3号巻頭言)で検討を加えているが,市民共同体としてのギリシャのポリスpolisあるいはローマのキウィタスcivitasが担うのが
res publicaである。この二項関係が崩れると権力の私物化(僭主制),帝政化(帝国主義)が行われ,国家は支配装置 になる。

プリツカー賞受賞(2024)以降,山本理顕の世界をまたにかけての疾走はとどまるところを知らない。2025年も,世界経済フォーラム(ダボス会議)のクリCrystal Awards受賞・講演,アラブ首長国連邦Abu Dhabi Festival Award受賞・ニューヨーク大学アブダビ校講演に始まり,ハンガリー,フィリピン,韓国,台湾,そしてベネズエラを飛び回った。そして,国内でも数々の講演会,シンポジウムに招かれ,「地域社会圏」「ローカル・エリア・リパブリック」をめぐって発言を続けてきた。そして,横須賀美術館で「山本理顕展 コミュニティと建築」(7月19日~11月3日)も開催された。

本号では,2025年の山本理顕の疾走を追う。

2025年は,ドナルド・トランプの2度目のアメリカ大統領(第47代)就任で幕を開け,世界は,アメリカ第一主義,MAGAの関税攻勢,不動産取引のディール国際政治に翻弄されてきた。そして,アメリカ第一主義が,実は,西半球を支配下に置くことを含んでいることが明らかになったのが,ベネズエラの石油輸送タンカーへ度重なる攻撃であり,2026年1月3日の秘密工作部隊による電光石火のマドゥラ大統領の拉致拘束であった。世界史は明らかに転換しつつある。まるで,西洋諸国のデマルカシオン(世界分割),帝国主義の時代に逆戻りするかのようである。

山本理顕が,ベネズエラ日本大使を通じて,カラカスのバリオの環境改善について相談を受け,初めてベネズエラを訪問したのは2024年11月である。そして,ロドリゲス副大統領(現暫定大統領)らと議論を行い,バリオを歩き,住民たちと交流してきた。この間歩いてきた、インドネシアのカンポン、フィリピンのバランガイ同様、バリオにはしっかりしたコミュニティ組織があった。

2025年には,2月,7月,9月,11月と4度ベネズエラに飛んでいる。バリオ再生の案を練り,11月24~25日には,国連人間居住計画UN-Habitatの事務局長のオンライン参加も得て第一回World Barrio Symposionを開催した。その矢先のマドゥラ大統領の拉致拘束であった。

ドナルド・トランプというひとりの「王」vs「ローカル・エリア・リパブリック」、山本理顕ははからずもその最前線に立っている。

布野修司(責任編集)

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